三菱自 富裕層頼みのタイ市場

タイで自動車メーカーが富裕層の開拓を競っている。
日本勢は多目的スポーツ車(SUV)を相次いで投入したほか、欧州メーカーも高級車の品ぞろえを増やした。割安なピックアップトラックや中小型セダンの比重が大きいタイだったが、消費に陰りがみえ、自動車販売の不振も長引く。自動車メーカーは消費不振でも一定の需要が見込める富裕層を取り込み、販売の下支えを狙う。

0000

三菱自動車はバンコクで開催中の自動車業界の大型展示会「ビッグモーターセール」で7年ぶりに全面改良した新SUV「パジェロスポーツ」を発表した。現地法人であるミツビシ・モーターズ・タイランドの一寸木(ちょっき)守一社長は「中核モデルの一つとして事業の成長に貢献するだろう」と期待を表明した。新型車の価格は113万8000バーツ(約400万円)からと高価だが、一般公開では家族連れなどが集まった。三菱自は2016年3月末までにタイで7000台売る計画だ。トヨタ自動車は7月半ばにSUV「フォーチュナー」を11年ぶりに刷新した。「全体の景気は悪くても、この車の販売は期待できる」とタイ現法幹部は話す。

タイの自動車市場は低迷しており、15年1~6月の新車販売は37万台と1年前から16%減った。販売が伸びない背景には輸出の不振や農家の所得減少による消費の冷え込みがある。銀行のローン審査も一段と厳しい。インラック前政権の新車販売促進策ではじめてクルマを買う需要が先食いされた影響も色濃く残る。だが、苦境の中でもSUVの落ち込みは緩やかだ。新車全体に占める比率は右肩上がりで12%が目前に迫った。今年は乗り心地がよい乗用車ベースのSUVが好調で、はじめてトラックベースのSUVの割合を上回った。「車を複数持つ富裕層が1台をセダンからSUVに替えている。若い消費者には最初からSUVを買う動きもある」と一寸木社長は指摘する。
変化を映す代表格が、ホンダの小型SUV「HR―V」(日本名ヴェゼル)だ。2割を超える高率の自動車物品税もあり価格は89万バーツ(約320万円)からと日本の約1.5倍だ。それでも都市部を中心に販売は好調で、ホンダのタイでの1~6月のSUV販売は約1万6000台と前年同期の3倍に急増した。

HR―Vを7月末に手に入れたエクササイズトレーナーのワラウィさん(32)は、4年乗った日系の小型セダンから買い替えた。ドライブ好きで、週末には友人を何人も乗せて郊外などに出かける。「セダンは荷室が足りないし古くさい。ぼくの生活スタイルにはSUVが合うんだ」と話す。
レジャーの多様化に加え、所得増もあり、タイの富裕層の市場は拡大している。調査会社ユーロモニターによると、14年のタイの全家計に占める可処分所得3万5000ドル(約430万円)以上の割合は3.5%。金融危機後の09年から1.2ポイント上がった。東南アジア主要6カ国ではシンガポールとマレーシアに続き、フィリピン(3.1%)やインドネシア(2.3%)を上回る。
タイの富裕層は資産家が多く、短期的な景気に消費行動が左右されにくい。高額でも好みや生活スタイルに合えば購入に踏み切る傾向が強い。そのため、自動車各社は富裕層の取り込みに動く。

 
マツダは年内にも小型SUV「CX―3」を売り出し、HR―Vに対抗する。
都市での使い勝手を重視して開発したSUVで、日本ではひと月目に1万台以上を販売した実績を持つ。独ダイムラーは年内にも新型SUV「GLC」をタイに投入し、先行するBMWの「X3」を追いかける。高級車に強いダイムラーなどはSUV以外でもタイで販売を伸ばしている。「メルセデス・ベンツ」ブランドは今年、過去最高のペースで売れており、1~6月は前年同期比17%増の5360台の販売を記録した。独BMWも12%多い4179台に伸ばした。市場全体が2ケタ減に沈んだ中で好調ぶりが目立つ。
タイ経済の回復が遅れるなか、自動車分野で底堅い富裕層消費の争奪戦が激しくなりそうだ。
日本経済新聞


[PR]

by ganbaremmc | 2015-08-04 17:28 | 三菱自動車 | Comments(0)