日産「リーフ」はカッコよければヒットしたか

日産自動車「リーフ」。2010年12月に量産初として市販開始された電気自動車(EV)は、発売から5年が経過した昨年12月に世界累計販売台数20万台を達成した。充電インフラを整えている日米欧の先進国を中心として、ジワジワと普及してきている。

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リーフは昨年11月の一部改良で大容量バッテリー搭載車(30kWh)を追加。
エンジン車やHVに比べるとまだ物足りないかもしれないが、最新リーフはJC08モードによる満充電での航続距離をデビュー当初の200kmから最長280kmまで向上させた(大容量バッテリー車のカタログ値)。今後も販売台数を積み上げていくことが予想される。  トヨタのHVが累計販売20万台に達したのは、初代プリウスを世に送り出した1997年から数えて9年目だった。新しいジャンルのクルマとして、リーフの普及速度は決して遅いとも言い切れない。ただ、「プリウス」「アクア」などの専用車を筆頭として、今や全世界で年間100万台レベルを売るトヨタ自動車のハイブリッド車(HV)に比べると、同じエコカーでもリーフがヒットしたとは言い難い。
リーフがヒット車にならなかったと指摘される理由には、航続距離の短さや充電インフラ設備の不安のほか、国や自治体の補助金を踏まえても250万円前後以上という車両価格の設定などが挙げられてきた。これらは確かにそのとおりだが、要因はそれだけでもないという話もある。一般ユーザーからの声として小さくないのが「リーフのデザインはカッコ悪くて、とても購入に踏み切れない」という率直な意見だ。  たしかにリーフは登場以来、デザイン面で賞賛を受けたという話はあまり聞かない。なぜこのような評価になってしまったのか。その後に登場したEVと比べると、思い当たる点はある。  EVは、ガソリンやディーゼルエンジンを積んだ内燃機関自動車とは、搭載するメカニズムがかなり違う。エネルギー源たるバッテリーは現状では燃料タンクより大きくならざるをえないが、形状の自由度は高く、力を生み出すモーターは逆にエンジンより小さい。モーターは超低回転で最大の力を出すので、トランスミッションは不要だ。

こうした中で、優れたデザインのEVを生み出すには、メカニズムの配置を含めてゼロから考えるのが理想だ。あるいは完成されたデザインを持つ既存の内燃機関自動車に電動パワートレインを組み込むという手法もある。現行車種で代表格を出すと、前者がテスラモーターズ「モデルS」、後者が三菱自動車工業「i-MiEV(アイミーヴ)」となる。  リーフはどちらでもなかった。既存の内燃機関前輪駆動車のレイアウトをベースに電動パワートレインを搭載し、新設計ボディを与えるというプロセスを取っているからだ。  具体的には、エンジンが積まれていたフロントノーズ内にモーターを置き、前輪を駆動する。バッテリーは前席下から燃料タンクがあった後席下に掛けて配置した。必然的に後席の着座位置は高くなり、全高は1545㎜と、このクラスのハッチバックの平均を上回ることになった。一方のフロントノーズはラジエーターがないことから、空力対策もあって低くされた。  低いノーズと背の高いキャビン。この2つの要素をつなげるのは難しい。フロントフードとウインドスクリーンを一直線につなげたワンモーションフォルムにする手もあっただろう。しかしリーフは日産のEV第1号として、グローバルで台数を稼ぐという目的があり、一般的な2ボックススタイルに落ちついた。

さらにリーフでは、EVであることをアピールするとともに、空力性能を高めるべく、フロントグリルをなくし、充電口のリッドをそこに切り欠いた。この位置に充電口を持つEVの多くが、グリルやエンブレム部分にリッドを隠しているのとは対照的だ。グリルレス+リッドというスタイルをEVの象徴にしようとしたのかもしれない。  前後のライト類の独特の形状もリーフの特徴だ。ヘッドランプはドアミラーに当たる風を減らすため、リアコンビランプは車体側面を流れる空気をリアに巻き込ませないための造形だという。ただしリーフの空気抵抗係数Cd値0.28に対し、プリウスは2003年発表の2代目ですでに同0.26を達成している。Cd値だけですべてを判断することはできないものの、このライト類にはEVらしさの演出も含まれていると考えて良さそうだ。

リーフのフロントフードを開けると、その眺めはガソリンエンジン車のようだ。モーターとインバーターを積み重ねた上に、エンジンを思わせるカバーが装着されている。まったく新しいクルマとしてリーフをアピールしたいのか、既存のクルマに似せたかったのか、ここだけ見ても判断に迷う。  似たような傾向は、2014年末に史上初の燃料電池市販車として登場したトヨタ「MIRAI(ミライ)」にも見られる。新開発プラットフォームを用いた4代目の新型プリウスとは対照的に、ミライはガソリン車のプラットフォームをベースとしている。そのためかリーフと同じ前輪駆動であり、モーターはフロントに置かれ、残りの場所に燃料電池スタック、2本の水素タンク、バッテリーなどを配置している。  その結果、ミライのパッケージングは前後が長く、キャビン(乗員室)の背が高い、既存の多くのセダンとは異なるものとなった。これをベースに、フロント左右に空気を取り入れるための大きなインテーク(開口部)を備え、ボディサイドは水の流れをイメージするようにラインを入れた。

 どちらも既存の内燃機関自動車のパッケージングを基本としたために、独特のプロポーションになった。そこに次世代エネルギー自動車であることを強調すべく、凝った造形を盛り込んだ。2台ともに、それをまとめるまでには相当の苦労があったことが伺えるが、制作の苦労が伝わるデザインが、果たして素晴らしいものなのかという思いは抱く。  同じEVでもテスラ「モデルS」は、まったく異なるアプローチでデザインされている。  そもそもテスラ自身、完全自社開発の自動車はこれが初めてだ。ゆえにプラットフォームは他車との関連がない、完全な新開発だった。床下全面に電池を敷き詰め、モーターは後車軸の位置に置かれる。4WDはプロペラシャフトを持たず、前車軸にもうひとつモーターを追加して対処している。  しかしプロポーションは流麗で、ガソリン車と見紛うほどまとまっている。EVであることを強調する造形もない。車内に入れば、フラットなフロア、インパネ中央の巨大なディスプレイ、前後に用意された荷室などで、独特の構造が理解できる。しかしモーターや電池は床下に積んでおり、それを見せるための仕掛けはない。  既存の内燃機関自動車をベースとしたEVでも、テスラに似たデザインの考え方を持つクルマはある。日産とアライアンスを組み、日産同様EVに積極的に取り組むルノーの「ゾエ」だ。

ゾエは内燃機関自動車ルーテシア(本国名クリオ)のプラットフォームを活用した。フロントにモーターを置いて前輪を駆動し、バッテリーはキャビン床下に積むという点はリーフと共通する。このクラスのハッチバックとしては背が高いこともリーフと同じだ。  しかしゾエに、EVらしさを強調する造形はない。充電口はフロントグリル中央のエンブレムが付く位置に隠されている。またデザインに関する説明を見ると、アジリティやエモーションという言葉が並ぶ。EVだから優しいデザインというロジックはそこにはない。逆に躍動感を強調したデザインのおかげで、腰高感を薄めることに成功している。

 自動車を含め、日本のプロダクトデザインは、全体的なプロポーションより細部の造形にこだわる傾向が強いと感じている。私たちがクルマに接するとき、まずは遠くから見てプロポーションが最初に目に入り、そこで第一印象が決まる。細部を吟味するのはその後であり、ユーザーを引き付けるためにもプロポーションは重要だ。  来年にはデビューが予想される次期リーフのデザインについて、複数の日産関係者から、より普遍的なデザインになるという言葉が発せられている。現行型はEVらしさにこだわりすぎたという意味を含めての言葉かもしれない。  このあたりの経緯はプリウスに似ている。プリウスも1997年に発表された初代は、リーフに似て一風変わったプロポーションを持っており、前衛的なエンジニアリングも影響して、ヒットには結び付かなかった。しかし先ほどCd値の話で登場した2代目は、現在まで続くトライアングル・シルエットを確立するなど、プロポーションで新しさをアピールした。これが北米などで受け、現在の地位を確立した。  日本のカーデザインは能力不足なのではない。意識を変えることで、多くの人がカッコいいと思うデザインは生まれるはずである。EVであっても例外ではない。
東洋経済

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by ganbaremmc | 2016-03-06 17:38 | 日産 | Comments(5)

Commented by 通りすがり at 2016-03-07 06:04 x
この手のこと言う奴はリーフが普通のデザインだったらだったらでもっと個性的でEVを感じさせるデザインならもっと売れていたというに決まってるからねぇ
またリーフが欧州製なら全く違うこと言ってるだろうね

Commented by 遅れてきた名無し at 2016-03-07 22:18 x
テスラこそ、オーソドックスなデザインだと感じますが??
Commented by 遅れてきた名無し at 2016-03-07 22:18 x
テスラこそ、オーソドックスなデザインだと感じますが??
Commented by ランヘボ at 2016-03-08 00:25 x
そんなことはないな
だって似たような不細工のアクアがバカ売れしてるんだもん
ブランド力と中身の問題
Commented by フォルティス at 2016-03-08 13:24 x
売れないよ!と思うよ