マツダのクリーンディーゼル乗用車に不正の余地はない

マツダのクリーンディーゼル搭載車の快走が続いている。  3月3日、国土交通省が国産ディーゼルエンジン搭載乗用車6車種の路上走行を行ない、排気ガスに含まれる窒素酸化物(NOx)量を測定した結果を公表した。それによると、マツダの2車種(デミオ、CX-5)以外の4車種が台上で実施する認証試験で定められている排出規準(0.08g/km)を2~10倍程度上回る数値を示したという。  実走行時の排出規準が存在しないため、これらの測定結果について法的な問題はない。しかし、規制基準値の0.5倍から1.3倍にNOxを制御できたマツダ車の成績が際立っている。これはマツダのクリーンディーゼルが広く消費者に受け入れられている事実の技術的側面からの裏付けになっていると言える。  経営的な側面もまた、このマツダ・クリーンディーゼルの好調さを客観的に裏付けている。  具体的には2月4日に公表された2015年度第3四半期業績の数字からだ。同社の国内における昨年一年間の総登録台数は10万2509台となり、単一メーカーとして初めて、クリーンディーゼル搭載車の年間10万台を突破。しかもこれは、一昨年の14年に同社が記録した4万8856台の2倍以上という数字になっている。まさに急激な成長だ。

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それだけではない、まだまだ市場規模が小さいとはいえ、クリーンディーゼル搭載車全体に占める国内市場のシェアも圧倒的だ。  昨年一年間の国内総登録台数は15万3592台であるから、同社のシェアは実に70%、つまり、国内で販売されたクリーンディーゼル乗用車の10台に7台がマツダ車だった、ということになる。  しかもこの製品カテゴリーに参入する企業が増加傾向を示している環境下であるにもかかわらず、一昨年の61%から、シェアを拡大しているのだ。  とりわけ昨年は9月にドイツの有力自動車メーカー、フォルクスワーゲン(VW)のスキャンダルが公になり、ディーゼルエンジンに対する消費者の信頼が揺らぐという逆風が市場に吹き荒れたことを考慮すれば、この前年比倍増しかも10万台突破、シェア70%という数字には重みがあると言ってよいだろう。  今回の国土交通省の路上走行試験が実施されたのも、このVWのスキャンダルが動機だといわれている。

それではなぜ、逆風にさらされてもマツダのクリーンディーゼル搭載車の勢いは衰えず、好調を続けているのか。そしてまた、国土交通省の路上走行試験でも、基準値をほぼ満たすような優れた数値を記録できるのか。  その理由を考察するには、まず、昨年秋のVWのスキャンダルの内容を振り返る必要がある。というのも、VWの行為を振り返ることによって、マツダのクリーンディーゼルの技術的そして経営的な”強さ”が浮き彫りになると思われるからだ  昨年9月、米国の環境保護局(EPA)をはじめとする規制当局の発表によれば、VWは実際に販売している製品でディーゼルエンジンの排気ガス規制を回避するための不正を行なっていたことを認めたという。  具体的には、ディーゼルエンジン車に搭載した電子制御装置のソフトウェアに細工をし、試験走行のときだけ意図的に規制モードに切り替え、通常走行のときには、排ガスに含まれる窒素酸化物の低減装置の一部または全部を無効化し、規制当局の検査に合格するようにしていた。これに該当するVW車は全世界で1100万台と公表された。

このニュースが流れたとき、同じくディーゼルエンジン車を生産販売している国産輸入を問わず自動車メーカーには、ユーザーからの問い合わせが殺到、ひとりVW製乗用車だけでなくクリーンディーゼル乗用車の人気も一時的に低落した。国内のメーカーの中で、ディーゼルエンジン車の販売台数が最も多いマツダもその例外ではなかった。  それでも、マツダはあわてなかった。  その理由は次のように、きわめて単純でわかりやすいものだったからだ。マツダが乗用車に搭載しているディーゼルエンジンには、VWの不正の対象となった排気ガスの窒素酸化物浄化装置そのものが、付いていないのだ。  したがって、付いてもいないものに“不正”を施す可能性など皆無。一般のディーゼルエンジンに装着されているはずの窒素酸化物浄化装置がない、これがマツダのクリーンディーゼルエンジン最大の特長・武器であり、消費者に対しても「マツダのクリーンディーゼル乗用車に不正の余地はない」という安心感を醸成できたのだ。

この窒素酸化物浄化装置がない、という事実が、今回の国土交通省の路上走行試験でもすぐれた数値を記録した最も大きな理由なのだ。  それではなぜ、マツダのクリーンディーゼルエンジンには、窒素酸化物の除去装置が必要ないのだろうか?  一般的に、ディーゼルエンジンには、排気ガス浄化装置が2種類装備されており、それぞれで排気ガス中の窒素酸化物(NOx)と粒子状物質(PM)を取り除く仕組みになっている。  つまり、各国各市場における排出ガス規制に適応させるためには、NOx用とPM用の浄化装置が個別に必要であり、あらゆる自動車メーカーにとって従来はこの技術的対応が困難で、“浄化装置2種類”は自動車業界の常識になっていた。  ところがマツダは、年を追って厳しさを増す世界各地の排気ガス規制をクリアするディーゼルエンジンの開発にあたって、この2種類の浄化装置のうち、NOx用装置を排除する、というある意味で、“非常識な”方針を打ち出したのだった。

開発開始から6年でその開発・製品化に成功した。マツダはこのエンジンに、SKYACTIV-Dという名称を付け、その第1号車としてCX-5というマツダの新型SUVに搭載した。2012年2月のことだ。このNOx用の浄化装置がないディーゼルエンジンの開発に成功した理由は何か? 成功のカギは何だったのか?同社でディーゼルエンジン開発一筋のエンジニア、パワートレイン開発本部パワートレイン技術開発部長・寺沢保幸による解説は明快だった。
マツダがこの独創的なディーゼルエンジン開発に着手したのは、今から10年前、2006年。折しもこの前年の2005年、国土交通省は国内で販売されるディーゼル自動車の排出ガス規制を強化する“新長期規制”を策定。さらに2009年にはこの規制は“ポスト新長期規制”となり一層厳しさを増した。このため、当時、国内のディーゼル乗用車販売は壊滅状態。というのも、ディーゼル車は排気ガスに問題があり、環境保全にマイナスという印象が国内の自動車市場に定着してしまっていたからだ。具体的には、排気ガスが汚い、音がうるさい、振動が大きい、高速でよく走らない、しかも車両の価格が高い、といった弱点を製品レベルで克服できていなかった。マツダの開発陣は、このディーゼルエンジンの刷新にチャレンジする。そこには、革新的なディーゼルエンジンを核にすることによって、マツダ独自の新しい乗用車を開発すべきでありできるはずだという読みがあった。革新的なディーゼルエンジン開発のカギは、このディーゼルエンジンの弱点を完全に克服することにあった。

 つまり、排気ガスを清浄化し、騒音と振動を抑え込み、高速でも快適に走り、しかも価格も消費者の手の届く水準にまでおさえる、裏返して言えば、それまでのディーゼルエンジンの持っている弱点をことごとく覆す、そんなディーゼルエンジンの開発こそがカギ、という意味だ。

排気ガスに問題があることで消費者の人気が衰退してしまったとはいえ、本来のディーゼルエンジンの長所はなんといってもガソリンエンジンよりも優れた燃料消費性能にある。というのも、圧縮比が16から18程度と高いために、一般的に9から11程度の圧縮比を持つガソリンエンジンよりも高い出力が得られるからだ。空気と燃料の混合気を圧縮する率、圧縮比が高ければ高いほど、燃焼したときに発生するエネルギーが大きくなるのだ。その種の教科書にも、「圧縮比を上げると熱効率が向上する」と書いてある、と寺沢は言う。ただし、ディーゼルエンジンの場合、圧縮比を高くすればするほど排気ガス中のNOxが増加するという弱点が顕著に現れてくる。従来のディーゼルエンジンの開発では、一般的に、高い出力が得られる高い圧縮率の維持を優先させ、高圧縮に伴う弱点については、浄化装置に工夫をして出力の低下を抑え込む対策に重点を置いていた。つまり高圧縮の維持と排気ガス浄化装置のいわば“妥協点”を探る手法をとっていたのだ。
sankeibiz.jp


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by ganbaremmc | 2016-03-12 20:12 | マツダ | Comments(1)

Commented by のぺのげ at 2016-03-13 00:43 x
人見の野郎の影がちらつくニュースっすね。
エンジンの鬼、人見。