マツダは本当にミニバンから撤退するのか

マツダがミニバンから撤退へ――。

2月28日付の日本経済新聞などが報じたところによると、マツダは現在販売している「プレマシー(海外名マツダ5)」「MPV(マツダ8)」「ビアンテ」のミニバン3車種の生産について2017年をメドに打ち切り、次期モデルの開発も行わないという。

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日本におけるミニバンはさまざまな形態があるが、3列シートで6~8人の多人数乗車が可能な車というのが一般的なとらえ方だ。この報道についてマツダ広報は「当社から発表したものではなく、将来の商品計画についてはお答えできない」としており、現時点で真偽のほどは定かではないものの、こうした報道が出ること自体、マツダにとってミニバンという車種の存在意義が薄れてきていることは否定できない。近年のマツダの車作りは、「スカイアクティブテクノロジー」と「魂動デザイン」の2つを核として、「走る歓び」を前面に押し出した戦略を取り、高い評価を受けている。日本カー・オブ・ザ・イヤーでは、この4年間に「デミオ」「CX-5」「ロードスター」という3台がこの栄光に輝いている。一方のミニバンは、走る喜びよりも利便性を追求した車種であり、どうしても車体は大きくなり、全幅の割に全高が高いので走りの面では不利となる。車両重量も重くなりがちでありつつ、ユーザーの燃費に対する要求も厳しいジャンルであり、運転の歓びを表現することは難しい。

軽自動車も似たような状況にある。マツダは軽自動車が現行規格になった1998年を境に、自社開発を中止し、スズキからOEM供給を受けている。ミニバンについても、国外ではOEM(相手先ブランドによる生産)で対応している。インドネシアでマツダが販売している3列シートの「VX-1」という車種は、スズキ「エルティガ」と同型であり、軽自動車同様、スズキにから供給を受けているからだ。自社開発を止める代わりに、OEMによってラインナップを保持するという手法も考えられる。ただし軽自動車と違い、ミニバンはほかの登録車と比較して選ばれる可能性もあり、それがOEMというのは、ブランド戦略としては違和感が出る。よって販売についてもミニバンから撤退する方向が妥当だろう。

そもそもミニバンの人気は、それほど伸びているわけではない。かつてミニバンという言葉を生み出した北米では、同じ3列シートを持つSUVに押されて人気が低迷している。しかも北米市場で求められるミニバンのサイズは日本よりはるかに大きい。ホンダ「オデッセイ」のように、日本向けと北米向けを別設計としている例もある。
欧州では、メルセデス・ベンツ「Vクラス」など商用車派生のボックスタイプは送迎用などで一定の需要はあるものの、ルノー「エスパス」が築いた純粋な乗用カテゴリーは伸び悩んでいる。そのためエスパスは現行型で、タイヤを大径化し、車高をやや高めたクロスオーバー風デザインを導入することで、躍動感を演出し、巻き返しを図ろうとしている。日本でもミニバンは、それほど伸びているわけではない。日本自動車販売協会連合会が発表した、2015年のボディタイプ別販売台数によると、ミニバン(セミキャブワゴン)は75万9155台で、SUVの38万3478台の約2倍の規模があるが、伸び率で見るとミニバンは前年比1.1%増で市場はほとんど拡大していないどころか、2012年は90万2715台、2013年は77万0541台だったことを考えると、この3年間で15%以上減少したことになる。

また2015年の車名別販売台数ランキングで30位以内に入っているミニバンを挙げると、もっとも売れたのは6位のトヨタ「ヴォクシー」で、以下10位トヨタ「シエンタ」、11位日産自動車「セレナ」、12位トヨタ「エスクァイア」、15位トヨタ「ヴェルファイア」、16位トヨタ「ノア」、17位ホンダ「ステップワゴン」、19位トヨタ「アルファード」、22位ホンダ「フリード」となる。30台中9台だから相応の比率と言えるが、メーカーを見るとトヨタ6、ホンダ2、日産1で、圧倒的にトヨタが強い。このうちヴォクシーとエスクァイアとノア、ヴェルファイアとアルファードは兄弟車だ。マツダのミニバンは残念ながら、30位圏内に入っていない。クラス別に見ると、ヴェルファイアとアルファードが属する3ナンバーのラージクラス、ヴォクシー/ノア/エスクァイア、セレナ、ステップワゴンが属する5ナンバーボディ(エンジン排気量2Lクラス)のミドルクラス、シエンタとフリードが属する5ナンバースモールクラス(同1.5L クラス)に、きれいに分かれている。すべてスライドドアを持ち、スモールクラス以外は全高が1.8m以上に達するボックスタイプである。逆にセダン並みに低い全高で一世を風靡したホンダ「オデッセイ」や、卵型ボディが特徴のトヨタ「エスティマ」は、昨年は30位圏内に入っていない。今の日本ではボックスタイプでないと売れない傾向になっているようだ。この傾向は、軽自動車のカテゴリーで背の高い車種が人気を博している状況と通じるところがある。ラージクラスを除くミニバンは、5ナンバー枠の中で開発される。その枠の中で、なるべく広い室内を用意しようとすれば、車体は自然と背の高い箱に近づく。


自転車の分野におけるママチャリもそうだが、日本人は使いやすさや便利さを乗り物に求める層が主流だ。対する欧米は、デザインや走りを重視するユーザーが多い。だから北米では力強いデザインが魅力のSUVに3列シートを備えた車種が人気となり、欧州ではデザインの自由度が高く走りでも有利なワゴンや 2列シートのミニバンが一定の支持を集めている。狩猟民族と農耕民族の違いが車選びまで影響しているのだろうか。興味深い現象である。マツダが国内で販売するミニバンはすべてスライドドアを持つが、ヴェルファイアに近いサイズを持つMPVと、ヴォクシーに近いサイズのプレマシーは全高1.7m以下と背が低く、ビアンテはヴォクシーなどに競合するボックスタイプでありながら、全幅が1.7mを超える3ナンバーとなる。売れ筋からやや離れた位置にいることが、低迷の原因ではないかと想像できる。


三菱自動車「デリカD:5」やスバル(富士重工業)「クロスオーバー7」のように、独自のキャラクターでアピールするという手法もあるだろう。しかし三菱やスバルは4WDが車作りの中核をなしており、それを生かしたミニバン作りはユーザーに理解されやすいのに対し、マツダのブランドイメージは最初に書いたように走る歓びであり、以前の記事(「マツダのデザインはなぜカッコ良くなったか」)でも書いたように、魂動デザインは肉食系猛獣の走る姿にヒントを得ているなど、箱型のミニバンとはそもそも相容れない。

マツダがミニバンから撤退するとなれば、それによって空く生産能力は、世界的に人気の高いSUVに振り向けられそうだ。SUVは、スポーツ・ユーティリティ・ビークルの略であることからわかるように、スポーツ性もキャラクターのひとつである。ゆえにポルシェやマセラティのような、スポーティなブランドが続々と参入している。マツダも国内で「CX-3」と「CX-5」という2車種のSUVを販売しており、そこにはスカイアクティブテクノロジーと魂動デザインも盛り込んでいる。いずれも販売は好調だ。これ以外に北米市場向けとして、ミニバンと同じ3列シートを持つ「CX-9」を生産しており、こちらは最近新型に切り替わった。一部ではこのCX-9も、MPVの後継車として日本導入するという噂があるが、全長5m以上、全幅1.9m以上のビッグサイズが日本で広く受け入れられるとは思えない。これをベースとして、かつて販売していた「CX-7」の復活版を登場させるのが、グローバル市場を考えれば得策ではないかと考える。マツダのミニバン撤退のニュースからは、グローバル市場への比重をさらに高めたいという意志を感じる。近年のスバルに通じる判断だと感じている。スバルは現行「レガシィ」や「フォレスター」について、メインマーケットである北米を重視してボディサイズを大幅に拡大した。その結果、一部の国内ユーザーから批判的な声が聞かれたが、結果的に北米での販売台数は伸び、利益率ではトヨタを抜くまでになった。近年のマツダのクルマづくりは、スカイアクティブテクノロジーにしても、魂動デザインにしても、完全にグローバル指向であり、国内のファンを含め、ミニバン撤退に納得する人が多いのではないだろうか。
http://toyokeizai.net/articles/-/108884


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by ganbaremmc | 2016-03-14 20:42 | マツダ | Comments(1)

Commented by hissa at 2016-03-14 22:01 x
日本独自の法律があったからだったんじゃないかな