米大統領候補トランプ氏が目をつけている自動車産業

過去の女性蔑視発言が発覚し、
批判にさらされる米大統領選共和党候補のドナルド・トランプ氏。
民主党候補のヒラリー・クリントン氏への追い風になりそうだが、
いまなお「トランプ警戒」を崩していない産業セクターがある。
米国内の雇用問題を巡ってトランプ氏から目を付けられている自動車業界だ。 

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「1000人超の社員を地元で雇用します」。
13日、トヨタ自動車はテキサス州発のプレスリリースを発表した。
この日は2017年半ばにも同州に開所する米新本社の地元メディアへの説明式。まだ建屋は完成していないが、北米担当のジム・レンツ専務役員が出席して記者会見までする力の入れようだ。 リリースには新本社が地域にもたらす雇用を含めた利点を書き連ねた。1220トンものテキサス産の石灰岩を使い、毎日数千人の建設労働者を雇う、地元への経済効果は72億ドル(約7400億円)相当――。「これはただのビル建設ではない」とレンツ専務役員は会見で述べている。 本社建設としては異例のイベントだが、これまでの大統領選の流れをさかのぼれば合点がいく。 「フォード・モーターはメキシコに出ていく。数千もの仕事がミシガンやオハイオから出て行く」。9月26日の第1回大統領選テレビ討論会。トランプ氏は米雇用の問題に触れた際、米国からメキシコに小型車の生産ラインを移すフォードをひきあいに、持論である企業の海外投資批判を展開した。 過去最多の視聴者を集めたと言われる同討論会のメッセージ効果は大きい。フォードは直後にツイッターで「過去5年間、我々は他のどの自動車メーカーよりも人を雇用し、車をつくってきた」と反論したが視聴者に伝わるはずもなく、企業イメージへの影響は避けられそうにない。 実はトヨタも討論会前の9月14日にメキシコ投資を発表している。メキシコ工場で約400人を追加で雇い1億5000万ドルを投資するという内容だ。この時は政治的な反応は無かったが、選挙戦のなかで「米国軽視」のレッテルを貼られかねないリスクをはらむ。 13日の会見ではレンツ専務役員は「Now Hiring(人材募集中)」を繰り返した。米雇用は減らさないと主張するフォードへのトランプ氏のやまない「口撃」に、トヨタも政治的な飛び火を警戒しているかのようだ。 だが、足元で人を増やすだけでは製造業の雇用減の本当の解決にはつながらない。自動車メーカーが多いミシガン州では1970年代に80あった自動車工場が今は39にまで減った。自動化も進み2000年に全米で約130万人いた工場労働者も今では100万人を割り込んでいる。期間従業員の割合も増える一方だ。 フォードで30年近く働いてきた労組の幹部は「中国やメキシコとの競争は避けられない。米自動車産業の最盛期は終わった」と明言する。米製造業の雇用を本当に底上げするならば高度なエンジニアリング技術の習得といった若者向けの教育改革が不可欠だが、選挙戦での議論はそこまで深まらない。 ウォール街も意識するトランプリスク。米製造業に限ってみれば、同氏にののしられることよりも、同氏を恐れたその場しのぎの対応こそが最大のリスクと言えそうだ。
日本経済新聞


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by ganbaremmc | 2016-10-31 21:40 | ニュース・その他 | Comments(0)